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コンピュータリソースを効率よく使うためのヒント

高品質のサンプリング音を使った楽器を使用するときは、コンピュータのリソース(メモリなど)もたくさん必要になります。使用する楽器が多いほど、必要なリソースも多くなります。お使いのコンピュータがGPOまたはJABBの最小限のシステム要件を満たしていなければ、おそらく期待通りの結果にはなりません。また、たとえ最新の高性能ハードウェアを使ったとしても、一度に演奏する楽器の数によってはコンピュータ処理に手間取ることもあります。コンピュータがデータ処理に手間取ると、プッという異音、音のもたつき、音の歪みなどが発生します。最悪の場合は演奏が完全に停止することもあり得ます。プレイバック時に問題が起こったときは、下記の対策を試してみてください(優先度の高い順に記述しています)。

  1. RAM容量が十分かどうかを確認する。Garritanのサンプリング音はRAMベースなので、(他製品のサンプルライブラリのようにハードディスクからストリーミングするのでなく)システムメモリに読み込んで使います。Garritanは最小で1GB RAMを推奨しています。Garritanインストゥルメントの中には、Steinway Piano、キースイッチ付きセクションバイオリンなど、かなり多くのメモリを使用する楽器があります。システムの搭載メモリが1GB以下の場合、メモリ不足になる可能性が高くなります。メモリが多いほど、一度に読み込めるGarritanインストゥルメントが多くなります。
  2. Finale以外のアプリケーションを閉じる。 MacOSXまたはWindowsで仮想メモリ管理やマルチタスキングを構成しても、他に起動しているアプリケーションがあると、Finaleの使用できる物理メモリなどのシステムリソースが不足することがあります(特にプレイバック時)。
  3. ミキサー画面のマスターボリュームを下げる。Finaleで設定したマスターボリュームのレベルが高すぎると、音の歪みが発生することがあります。その場合は、Finaleのミキサー画面を開き、マスターボリュームのスライダーを下にドラッグしてください(推奨レベルは64以下です)。この状態でGarritanインストゥルメントのプレイバック音が全体に弱いときは、システムのボリュームまたはコンピュータスピーカーのボリュームを大きくしてください。
  4. ポリフォニーの数を減らす。ポリフォニーとは、1つのGarritanインストゥルメントで同時に発音できる最大ノート数のことです。初期設定では、GPOのGteinway PianoやJABBのSteinway Jazz Pianoなどの最大同時発音数は32です。発音するノート数が多いほど、高い処理能力が必要になります。サステインペダルを踏んだ状態でピアノの和音(特に音符数の多い和音)を連続して演奏するような場合、短時間に多くのノートが重なるので、コンピュータ処理が手詰まりになります。ハープのグリッサンドやティンパニのロールなども同様です。急にプレイバックが停止したり音が歪んだりしたときは、最大同時発音数の初期値が大きい楽器(ピアノ、ハープ、パーカッション、弦楽器など)のポリフォニーを減らしてみてください。手順は次のとおりです。

GPOのソロ楽器とJABBの管楽器のポリフォニーは変更しないでください。

Kontakt Player 2では、各楽器のポリフォニー設定は〔Voices〕ボックスにあります。

左側(〔Voices〕ボックス)の数字は、現在演奏しているノート数を表します(プレイバックが停止していればゼロになります)。右側(〔Max〕ボックス)の数字は、その楽器のポリフォニー(同時発音数)の最大値を表します。この数字の右にマウスカーソルを置くと、小さな上下の矢印が現れます。上矢印をクリックするとポリフォニーの最大値が大きくなり、下矢印をクリックすると小さくなります。

重奏弦楽器(Violins1KSなど)は、演奏する各ピッチで2単位分のポリフォニーが必要とされます。例えば1stバイオリンにディヴィジセクションがあり、両方のパートが重音を演奏する場合(同時に4ピッチを演奏)、4つの音符を鳴らすにはポリフォニーを最小でも「8」に設定する必要があります。

 

  1. リバーブのレベルを下げるか、オフにする。Ambience Reverbを有効にすると、コンサートホールなどの場所で演奏しているような効果が加わるためサウンドが一段とリアルになります。その反面、その分の処理能力が必要になります。Ambience Reverbの〔Quality/CPU〕のレベルを下げると、コンピュータへの負荷が減ります(詳しくは「Ambience Reverb」の説明を参照)。また、〔VSTバンク/エフェクト〕ダイアログボックスで〔Ambience Reverb〕のチェックマークを外して、Ambience Reverb自体をオフにすることもできます。オーディオファイルを保存したあと、別のデジタルオーディオアプリケーションでAmbience Reverbの効果を適用することもできます。
  2. プレイバック時の楽譜スクロールをオフにする。プレイバック時に画面の楽譜がスクロール表示するのは便利な機能ですが、コンピュータは同時に2つのタスク(Garritanインストゥルメントの演奏と画面の再描画)を処理することになります。楽譜のスクロール表示をオフにすれば(そして、印刷した楽譜を目で追うようにすれば)、コンピュータのシステムリソースを100%プレイバックに使えるようになります。スクロール表示をオフにするには、〔プレイバック・コントローラー〕ウィンドウ(Mac)/〔プレイバック設定〕ダイアログボックス(Windows)で、〔楽譜をスクロールする〕のチェックマークを外します。

  1. GPOインストゥルメントのLite版を使う。GPO製品版には、ピアノとハープのみフルサイズ版とLite版の両方が用意されています。Lite版はフルサイズ版より少ないRAM容量で演奏ができます。使用する楽器が多いためにメモリ不足になる場合は、ハープとピアノはLite版で対応できないかを検討してください(特にハープのハーモニクス奏法が不要な場合。Lite版はハープのハーモニクス奏法が除去されています)。

JABBはGPOよりさらに多くのシステムリソースを必要としますが、JABBもほとんどの楽器にLite版があります。JABBのLite版は、JABBインストゥルメントの高度な機能(エアフローノイズ、フォールオフ、ドゥイットなど)の一部が省かれていますが、RAMなどシステムリソースの使用量が少なくてすみます(JABBインストゥルメントの機能についてはGarritan Jazz and Big Bandをご参照ください)。JABBは高性能のシステム構成を必要とするため、多くのユーザーがJABBインストゥルメントのLite版だけを使っています(Lite版を使うときは「Notation」フォルダ内の楽器だけを使用してください。他のフォルダのLite版は使わないでください)。

キースイッチ(KS)付きの楽器も通常の楽器よりメモリを消費します。一般的にはキースイッチ付きの楽器を使うのがベストですが、弦楽器のピチカート、ミュート奏法などキースイッチを使用する奏法(詳細はキースイッチをご参照ください)が不要であれば、キースイッチのない弦楽器(楽器名に「KS」がない楽器)を使うとメモリの節約になります。他のキースイッチ付き楽器(GPO製品版の管楽器など)も同様です。例えば管楽器の演奏で弱音器を使うことがなければ、キースイッチ付きでない楽器を選択した方がメモリを節約できます。さらに、ソロ楽器よりプレーヤー楽器の方がメモリ消費量が少ないことも覚えておいてください。実際にメモリ不足になったときは、プレーヤー楽器だけにするとメモリ消費を抑えることもできます。詳しくはGarritanインストゥルメントのバリエーションをご参照ください。

  1. 楽器の数を減らす。楽曲を構成する各楽器に個別のGarritanインストゥルメントを割り当てるのが理想的ですが、RAM 1GB程度を搭載したコンピュータで大規模なオーケストラ譜を演奏するのはおそらく不可能です。解決策として、フルート1とフルート2、オーボエ1とオーボエ2などに同じチャンネルと同じGarritanインストゥルメントを割り当てるという方法があります。この方法はいくつか不都合な副次効果がありますが(演奏者ごとに強弱記号を割り当てることができない、ユニゾンがソロのように聞こえるなど)、実際にメモリ不足になったときは、マイナスの影響以上に有益な効果があります。ポリフォニーの最大値が正しく設定されていることを確認してください。

この方法はJABBインストゥルメントにはおすすめできません。

  1. アタックを不規則に変化させる。トゥッティのフレーズをプレイバックしているとき(=多くの楽器が同時にアタックを演奏しようとしたとき)、異音(プッという音やクリック音)が聞こえることがあります。各楽器のアタックのタイミングがわずかにずれていれば、多くのGarritanインストゥルメントを同時に演奏しやすくなります。ほとんどのHuman Playbackスタイルはアタックをごくわずかにずらす機能を持っていますが、〔MIDIツール〕メニューの〔不規則に変更〕を選択すると、アタックがずれる効果を大きくすることができます。詳しくはFinaleユーザーマニュアルの「不規則に変更ダイアログボックス」をご参照ください。〔不規則に変更〕ダイアログボックスでアタックのタイミングを変更した場合は、〔Human Playbackの初期設定〕ダイアログボックスの〔MIDIデータ〕画面で〔音の始まり/終わり〕を〔既存の情報を加味〕に設定してください。

  1. 複数のオーディオファイルに保存したあと、結合する。上記の対策をすべて試してなおプレイバックの問題が解消しない場合でも、まだ解決の余地はあります。Finaleの〔オーディオファイルとして保存〕コマンドを使って、同じ楽曲を何度か繰り返し録音して高品質のオーディオファイルを作成するという方法もあります。このとき、コンピュータが処理できる楽器数で1回ずつ録音します。例えば、4つのオーケストラセクション(木管楽器、金管楽器、パーカッション、弦楽器)のそれぞれについて録音し、全部で4つのオーディオファイルを作成します。そのあと、Audacity、Garage Band(Mac)などのマルチトラックオーディオエディタで4つのオーディオファイルを1つのステレオファイルに結合します。

この方法を実行する場合は、〔Human Playbackの初期設定〕ダイアログボックスの〔テンポ変化〕画面にある〔テンポ・ルバートを生じさせない〕を選択してください。

また、カウントオフも一緒に録音しておくと、あとでオーディオファイルを整合する作業が楽になります。〔MIDI/Audio〕メニューから〔クリック音とカウントオフ〕を選択して、〔カウントオフ〕を〔常時〕に設定します。

〔メトロノーム音〕の設定欄で、カウントオフをGarritanインストゥルメントで再生するように指定できます。例えば、録音する楽曲でBasic Orch Percussionが使われていれば、スネアドラムなどの音をカウントオフに指定できます。手順は次のとおりです。〔チャンネル〕にBasic Orch Percussionに割り当てられているチャンネルを指定し、〔音符〕にはスネアドラムをトリガーするノートナンバー(MIDIノ―ト59など)を入力します。ドラムとパーカッションをご参照ください。

Garritanインストゥルメントを使った楽譜を〔オーディオファイルとして保存〕で保存するとき、FinaleはGarritanインストゥルメントのプレイバック音をリアルタイムで保存します。コンピュータが一瞬だけ過負荷となってプレイバックに少しでももたつきが生じると、そのもたつきも含めてオーディオファイルに保存されます。この場合、他のオーディオファイルと整合するのが困難(または不可能)になります。この現象が発生したときは、一度に録音する楽器の数を減らしてみてください。

なお、オーディオファイルを保存するときだけGPOインストゥルメントに切り替え、それ以外のときはSmartMusicソフトシンセに戻してプレイバックできることも覚えていてください。

  1. Kontakt PlayerのCPU過負荷保護とパージモードを使う(KontaktPlayer2のみ)。Kontakt Player 2には、コンピュータへの負荷が高くなってもプレイバックを続行させる機能があります。コンピュータのCPUがプレイバック音を処理しきれなくなったとき、いくつかのボイスを止める(発音数を減らす)ことでプレイバックを続行します。この機能を有効にするには、まずKontatktPlayer2の画面にある〔Options〕ボタンをクリックします。

〔Options〕ダイアログボックスの〔Audio Engine〕タブを選択します。〔CPU Overload Protection〕ドロップダウンリストで、過負荷時の動作を〔relaxed〕、〔mdedium〕、〔strict〕から選択します。

それぞれの設定を試してから最適な設定を見つけてください。

パージモードは、楽譜の演奏に必要なサンプルだけをKontakt Player 2に読み込むことでメモリを節約する機能です。例えば、ピアノパートが7オクターブのクロマティックランを演奏するのでなければ、GarritanのSteinway Pianoに含まれているサンプルを必ずしも全部読み込む必要はありません。パージモードを利用すると、必要なサンプルだけをKontakt Playerに読み込むことができます。

Kontakt Player 2は記譜内容を識別できないことに注意してください。つまり、一度もプレイバックしていない状態では、どの音符が使われているかは把握できていません。すべての楽器をパージしたあと、最初にプレイバックするときは音が鳴りません。これは、読み込まれているサンプルが1つもないからです。プレイバック時に音が鳴っていなくても、楽譜で使われている音符のリストが構築されています。したがって、最初に楽譜全体を1回通して演奏することが重要です。

最初の(無音の)プレイバックが完了したら、Kontakt Player 2の〔Purge〕メニューから〔Update Sample Pool〕を選択します。

以上の操作で、楽曲の演奏に必要なサンプルだけが各楽器に読み込まれ、赤い枠がオレンジ色に変わります。オレンジ色の枠は、必要なサンプルだけが読み込まれていることを表します。

必要なサンプルがすべて読み込まれたので、今度は正しくプレイバックできます。なお、楽譜に変更を加えたり、別の楽譜を新しく開いたりしたときは、上記のプレイバック手順を繰り返して〔Update Sample Pool〕を選択する必要があるので注意してください。

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