Finaleには、フレット楽器の記譜に特化した多くの機能があります。例えば、簡単にタブ譜パートの記譜をおこなえる専用のタブ譜が用意されていて、〔ステップ入力ツール〕や〔高速ステップ入力〕ツールを使用してフレット番号の追加や編集をおこなったり、〔変形図形〕ツールを使ってタブスライドやギターベンドなどのギター記号を入力することができます。また、MIDIギターを使用してタブ譜に直接演奏情報を書き込むこともできます。
タブ譜とは、ギターなどのフレットがついた楽器のための特殊な楽譜で、通常2本の五線から構成されており、上の五線には通常の表記法で音符が描かれ、下の五線はそれぞれの線が楽器の弦を表し、符頭の代わりにフレットのポジションを表す小さい数字が表示されます。
タブ譜の例：通常の五線譜と、弦楽器の弦の数と同じ直線で表現されたパートがその下段に表示されます。
タブ譜を作成するには
- （ギター用に移調した）通常表記の五線に、通常の方法でパートを入力します。
セットアップ・ウィザードを使用すると、移調ギターパートを適切に作成することができます（1オクターブ上に移調）。通常の五線譜の下にすでにタブ譜が表示されている場合は、このステップを飛ばしてください。
- スコア・マネージャーの〔楽器リスト〕タブを選択し、〔楽器追加〕をクリックします。〔すべて〕>〔タブ譜〕の順に選択し、目的のタブ譜五線を選択します（タブ譜五線には楽器名の後ろに[TAB]と表示されています）。楽譜の下部にタブ譜が表示されます。
独自のタブ譜を作成する方法については、「タブ譜を最初から作成するには」をご参照ください。
- 選択ツール
を選択して、通常の五線のすべての小節を選択します。選択方法については楽譜の選択をご参照ください。 - 選択された箇所をクリックして、そのままタブ譜の五線までドラッグして重ねます。〔使用フレットの下限〕ダイアログボックスが表示されます。必要に応じて設定を変更します。
- 〔OK〕をクリックします。記譜用パートに記譜されていた音符は、タブ譜上でそれぞれの音符に呼応する数字として表示されます。
曲の一部分だけをこのようにしてタブ譜に変換したい場合は、そのままコピーしたい箇所だけを選択して、ドラッグしてタブ譜パートに重ねてください。また、逆にタブ譜上の数字譜を〔選択〕ツールでドラッグコピーして記譜用パートに重ねることもできます。その場合、それぞれの数字が、呼応するピッチの音符として表記されます。
タブ譜の表記法を日本仕様に変更するには
日本で一般的なタブ譜の記譜法は、欧米のものとは若干異なります。例えば、日本式では符尾や連桁、休符などの記譜要素をタブ譜側にもすべて表記します。Finaleでセットアップ・ウィザードや上記の方法を使用して作成されたタブ譜は、基本的にアメリカ仕様になりますが、下記の手順をふんでいただくことにより日本式の表記法に変更することができます。
- セットアップ・ウィザードあるいは前述の方法でタブ譜パートを作成します。
- 〔五線〕ツールをクリックし、仕様を変更したいタブ譜パートのハンドルをダブルクリックします。〔五線の属性〕ダイアログボックスが表示されます。
- 記譜スタイル〕の右にある〔選択〕ボタンをクリックします。〔タブ譜の設定〕ダイアログボックスが表示されます。〔OK〕をクリックします。
- 〔フレット番号〕欄の〔垂直位置調整〕メニューから〔EVPU〕を選択し、テキストボックスに“－12”と入力します。
- 〔フレット番号〕欄の〔フォント指定〕ボタンをクリックし、タブ譜の数字として任意のフォントを選択し、サイズを“9ポイント”に設定します。
- 〔五線の属性の設定をタブ譜用にリセットする〕がチェックされている場合はチェックを外します。テンキーを使ってフレット番号を入力します。
- 〔OK〕をクリックします。〔五線の属性〕ダイアログボックスに戻ります。
- 〔五線の種類〕から〔その他〕を選択します。〔特殊な五線の設定〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔設定〕欄の〔計測単位〕を〔スペース〕に変更し、〔五線の間隔〕に“１”と入力します。
- 〔OK〕をクリックします。ふたたび〔五線の属性〕ダイアログボックスに戻ります。
- 〔符尾の設定〕ボタンをクリックします。〔符尾の設定〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔符尾の向き〕で〔デフォルトの向き〕を選択し、〔連桁を表示〕にチェックを入れます。
- 〔符頭との接続位置を調整する〕のボックスにチェックが入っていることを確認し、〔符頭からの距離〕を選択し、〔計測単位〕から〔EVPU〕を選択して、〔上向き符尾〕に“14”、〔下向き符尾〕に“－14”を入力します。
- 〔連桁との接続位置を調整する〕にチェックが入っている場合はそれを外します。
- 〔OK〕をクリックしてください。〔五線の属性〕ダイアログボックスに戻ります。
- 〔表示する項目〕欄で、〔付点〕、〔休符〕、〔符尾〕などにチェックを入れます。その他の項目については任意に設定してください。
- 〔OK〕をクリックしてください。必要に応じて〔サイズ〕ツールを使用して五線のサイズを拡大してください。一般的にはタブ譜のパートは通常の五線より120〜140％程度拡大して表記する場合が多いようです。
タブ譜パートに直接入力するには（ステップ入力）
- ステップ入力ツール
を選択します。メニューバーに〔ステップ入力〕メニューが表示されます。 - 〔ステップ入力〕メニューから〔ステップ入力オプション〕を選択します。〔ステップ入力オプション〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔入力直後のタブ譜の音符を選択〕を選択します。
- 〔OK〕をクリックします。
- ステップ入力パレットから音価を選択して、タブ譜をクリックします。クリックした弦に「0」（あるいは〔タブ譜の設定〕ダイアログボックスで使用フレットの下限として指定されている数字）が表示されます。
- テンキーを使ってフレット番号を入力します。
代わりに、
- 〔ステップ入力〕メニューから〔ステップ入力オプション〕を選択します。〔ステップ入力カーソルを使用〕にチェックを付けて、〔OK〕をクリックします。譜面上にステップ入力カーソルが表示されます。表示されない場合は
- カーソルをタブ譜へ移動します。左右の矢印キーを押すとカーソルが横方向に移動します。
- 音価を選択します。目的の音価をステップ入力パレットのアイコンで選択するか、テンキーで入力します。また、
- 通常のキーボードで弦の番号を入力します。例えば通常の6弦ギターのタブ譜の場合、「1」を入力すると、一番上のE弦にカーソルが移動します。
- テンキーを使ってフレット番号を入力します。9より大きいフレット番号を追加するには、
- カーソルを使ってフレット番号を追加する場合、Enterキーを押して指定の弦にフレット番号0を追加し、
- 直前に入力したフレット番号を変更するには、
- 直前に入力したフレット番号の音価を変更するには、
- 直前に入力したフレット番号の弦を変更するには、
- 直前に入力したフレット番号に別のフレット番号を追加するには、まず、
ステップ入力時のタブ譜関連のコマンドとキー入力の一覧を表示するには、〔ステップ入力〕メニューの〔タブ譜編集コマンド〕を選択してください。
タブ譜を編集するには（ステップ入力）
ステップ入力時のタブ譜関連のコマンドとキー入力の一覧を表示するには、〔ステップ入力〕メニューの〔タブ譜編集コマンド〕を選択してください。
- ステップ入力ツールを選択します。
- フレット番号を別の弦に移動するには、フレット番号を
選択を解除した時にフレット番号がオレンジ色で表示された場合は、その弦で使用できるフレットの範囲を越えてしまったことを表します。弦やフレット番号を変更するか、その弦のフレット数やチューニングの設定を変更するかして、フレット番号が範囲内に収まるようにしてください。弦のチューニングをカスタマイズする方法については、フレットボード楽器定義ダイアログボックスをご参照ください。
- フレット番号を変更するには、フレット番号を
代わりに、
- 同じ拍の音符にフレット番号を追加するには、フレット番号を
代わりに、
MIDIを使用してタブ譜にフレット番号を入力するには（高速ステップ入力）
外部MIDIデバイスを使ってフレット番号を入力する作業は、通常の五線譜を入力するのと同じように簡単です。以下の手順により、高速ステップ入力でタブ譜を作成する準備をします。MIDIギターを使う場合は、各弦が個別のチャンネルに割り当てられているか確認してください。詳しくは、タブ譜のMIDIチャンネル設定ダイアログボックスをご参照ください。
- 高速ステップ入力ツール
を選択します。メニューバーに〔高速ステップ〕メニューが表示されます。 - 〔高速ステップ入力〕メニューから〔MIDIキーボードを使用〕を選択します。〔MIDIキーボードを使用〕を選択すると、Finaleは、MIDIデバイスの入力を受け付けることができる状態になります。
- 〔高速ステップ〕メニューの〔タブ譜を五線譜として編集〕の選択を解除します。これにより、フレット番号が表示されるようになります。
- 小節をクリックして編集枠を表示し、通常の方法で入力します。すると、音符の代わりにフレット番号が表示されます。
弦とフレットの番号はFinaleが適切に計算します。
MIDIデバイスを使った入力の詳細については、「MIDIを使用して高速ステップ入力で音符を入力するには」をご参照ください。
高速ステップ入力でタブ譜の入力、編集をおこなうには
コンピュータのキーボードを使用して、高速ステップ入力で手動でフレット番号を入力、編集することもできます。
- 高速ステップ入力ツールを選択します。メニューバーに〔高速ステップ〕メニューが表示されます。
- 〔高速ステップ〕メニューの〔MIDIキーボードを使用〕の選択を解除します。
- 〔高速ステップ〕メニューの〔タブ譜を五線譜として編集〕の選択を解除します。これにより、フレット番号が表示されるようになります。
- 音符を表示する最初の小節をクリックします。編集枠が表示されます。
- 上下の矢印キーを使って、目的の弦の位置にカーソルを移動します。数字キー（音価に対応するキー）を押してフレット番号を作成します。最初に入力したとき、フレット番号はつねに0（ゼロ）になります。
- +（プラス）キーを押してフレット番号を指定します。+（プラス）キーを押すごとにフレット番号が1ずつ増え、-（マイナス）キーを押すと1ずつ減ります。
タブ譜を最初から作成するには
以下の解説では、まったく白紙の状態からタブ譜を作成、使用する方法について説明します。ただし、タブ譜の設定をおこなう場合はファイル・セットアップ・ウィザードを使用した方が簡単です。詳しくは「タブ譜を作成するには」をご参照ください。作成したタブ譜を編集する方法については、上記の「タブ譜を編集するには」をご参照ください。
- スコア・マネージャーで〔楽器追加〕をクリックして、〔空五線〕>〔空五線〕を選択します。
- 〔記譜スタイル〕
- 〔設定〕をクリックします。〔タブ譜の設定〕ダイアログボックスが表示されます。ここでフレットのある楽器の一番低いフレットの音などの、タブ譜に関する設定をおこないます。
- 〔五線の属性の設定をタブ譜用にリセットする〕を選択します。これにより、五線属性の設定がタブ譜用のデフォルト値にリセットされます。
- 〔OK〕をクリックします。楽譜にタブ譜が表示されます。
（アメリカ式の）タブ譜では、休符やタイはタブ譜のパートには表示しませんので、〔表示する項目〕でそれらのボックスのチェックが外れていることに注意してください。
タブ譜に符尾と連桁を表示するには
- テンポ・ツール
を選択します。 - タブ譜五線をダブルクリックします。〔五線の属性〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔表示する項目〕の下の〔符尾〕を選択します。
- 〔OK〕をクリックします。楽譜上に戻ると、タブ譜五線に符尾と連桁が表示されます。
符尾の水平または垂直位置の調整や符尾の向きについては、〔符尾の設定〕ダイアログボックスで設定できます。
選択範囲の使用フレットの下限を変更するには
- 選択ツールを選択して、タブ譜五線の範囲を選択します。選択方法については楽譜の選択をご参照ください。
- 〔ユーティリティ〕メニューの〔変更〕から〔フレットの下限〕を選択します。〔使用フレットの下限の変更〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔使用フレットの下限を指定〕を選択してフレット番号を入力します。これにより、指定した数よりも上のフレットが使用されるようになります。
- 〔OK〕をクリックします。すべてのフレット番号が、下限として指定された番号より大きくなるように再計算され、正しい弦に表示されます。
タブ譜に拍子記号を追加するには
（アメリカ式の表記では）一般的に通常の五線が並記されている場合、タブ譜パートには拍子記号を表示しませんので、Finaleの初期設定では拍子記号を表示しないように設定されています。タブ譜にも拍子記号を表示させたい場合は、以下の手順を実行してください。
- テンポ・ツールを選択して、タブ譜五線をダブルクリックします。〔五線の属性〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔表示する項目〕の下の〔拍子記号〕を選択します。
- 〔OK〕をクリックします。楽譜上に戻ります。拍子記号が表示されますが、やや小さく、タブ譜の五線の中央に表示されていないので、これを調整する必要があります。
- 〔書類〕メニューから〔ファイル別オプション〕を選択し、〔拍子記号〕を選択します。〔ファイル別オプション－拍子記号〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔計測単位〕で〔EVPU〕を選択します。ここでは単位としてEVPUEVPU（ENIGMA Virtual Page Units）とは、楽譜のサイズやスペーシングを計算するのに便利なFinaleの計測単位です。1インチが288 EVPU、1スペースが24 EVPUに相当します。Finaleでは、インチ、センチメートル、ポイント、スペースなど、様々な計測単位に変換しながら作業することができます。を使用します。
- 〔垂直位置調整〕欄で、〔別形式のキャラクス〕に「-20」、〔分子の数字〕に「-16」、〔分母の数字〕に「-20」をそれぞれ入力します。
- 〔適用〕をクリックします。
- カテゴリのリストから〔フォント〕を選択します。〔ファイル別オプション－フォント〕ダイアログボックスが表示されます。
- 〔楽譜関係〕から〔拍子記号〕を選択します。
- 〔楽譜関係〕の行にある〔フォント指定〕ボタンをクリックします。〔フォント〕ダイアログボックスが表示されます。
- サイズを36ポイントに設定します。
- 〔OK〕を2回クリックして楽譜上に戻ります。これにより拍子記号が拡大され、五線の中央に表示されます。
必要に応じて前述の〔ファイル別オプション〕ダイアログボックスの〔拍子記号〕および〔フォント〕欄で数値を微調整してください。例えば、拍子記号を2本目と4本目の線の間に表示させたいという場合、〔拍子記号〕欄で〔分子の数字〕に「-28」、〔分母の数字〕に「-10」を入力して、〔フォント〕欄で拍子記号のフォントを26ポイントに調整します。
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