テンポ

ここで解説される手順によって設定されるテンポは、楽譜上に記された音符をそのまま読む、つまりクォンタイズされた音符をプレイバックし始める時の初期テンポです。しかし、旧バージョンのFinaleで〔シーケンス採譜〕モードのレコーディングによって採譜された楽譜をプレイバックする場合には、オプションとして実際におこなわれた演奏の細かく変動するテンポを適用することも可能です。取り込まれたMIDIデータの取り扱いについての詳細は、「プレイバックのオプションを設定するには」をご参照ください。

プレイバック用のテンポを設定して定義された発想記号（メトロノーム記号作成プラグインで作成した発想記号など）は、プレイバック・コントローラーで設定されたテンポより優先されます。

1. 〔ウィンドウ〕メニューから〔プレイバック・コントローラー〕を選択します。プレイバック・コントローラーが表示されます。
2. スピーカーアイコンの隣りにある〔テンポ〕テキストボックスにプレイバックのテンポを入力してください。

   ここで入力する数値はメトロノーム表記で標準的に使用されている数値（1分間あたりの拍数）です。ドロップダウン メニューから、拍の単位となる音符（4分音符など）を選択してください。

プレイバック時のテンポを変化させるPrestoやAdagioなどの速度標語は、楽譜上のどこにでも挿入することができます。詳しくは、速度標語をご参照ください。

Finaleでは accel. やaccelerando は〔速度変化〕カテゴリの発想記号として扱われ、〔発想記号〕ツールを使って楽譜上に配置します。テンポが徐々に上昇するのを図形で表すには、連桁：先細の連桁をご参照ください。

1. 発想記号ツールを選択します。
2. 記号を割り付けたい音符または小節の付近をダブルクリックします。〔発想記号の選択〕ダイアログボックスが表示されます。
3. 〔速度変化〕をクリックします。レビューウィンドウに速度変化記号の一覧が表示されます。
4. 一覧に“accel.”記号があれば、これをダブルクリックします。楽譜に“accel.”記号が表示されます。配置設定は、〔速度変化〕カテゴリの設定が適用されます（発想記号カテゴリの設計ダイアログボックスを参照）。一覧に“accel.”記号がない場合は、以下の手順で作成します。
5. 〔作成〕をクリックします。〔発想記号の設計〕ダイアログボックスが表示されます。
6. 「accel.」または「accelerando.」と入力します。フォント、フォントサイズ、スタイルは、〔速度変化〕カテゴリの設定が適用されます。
7. 〔OK〕、〔選択〕の順にクリックして、楽譜上に戻ります。位置を修正するには、記号のハンドルをドラッグします。削除するには、ハンドルをクリックしてDeleteを押します。

   詳しくは、発想記号をご参照ください。

手動で定義したアッチェレランド記号をプレイバックに反映させるには、〔HumanPlayback〕を〔使用しない〕に設定してください。

FinaleのHuman Playback機能を使用すれば、「accel.」などの文字発想記号が自動認識され、プレイバック時にテンポ調整が適用されます（プレイバック設定ダイアログボックスとを参照）。しかし、ユーザー独自のテンポ変更を手動で設定することもできます。ここでは、再利用できる発想記号に速度変化を割り当てる方法を説明します。特定の範囲に対して個々のテンポチェンジを簡単に録音するには、テンポタップを使用してください。

1. 発想記号ツールを選択します。楽譜にまだ記号が配置されていないときには、五線上のどこかをダブルクリックしてください。〔発想記号の選択〕ダイアログボックスが表示されるので、使用したい記号をクリックして、〔編集〕をクリックし、ステップ3に進んでください。
2. すでに配置された記号を編集する場合は、ハンドルをCtrl＋ダブルクリックしてください。〔発想記号の設計〕ダイアログボックスが表示されます。
3. 〔プレイバック〕タブをクリックします。
4. 〔タイプ〕から〔テンポ〕を選択します。
5. 〔MIDI反映図形〕を選択し、〔選択〕ボタンをクリックします。
6. 〔作成〕をクリックして〔MIDI反映図形の定義〕ダイアログボックスを開き、〔図形番号〕をクリックして、〔作成〕をクリックします。〔図形作成〕ウィンドウが表示されます。
7. 〔図形作成〕メニューから〔定規とグリッド〕を選択します。
8. 〔8分音符〕をクリックします。
9. 〔グリッドポイント間隔〕のテキストボックスに「1」と入力し、〔OK〕をクリックします。
10. 〔図形作成〕メニューの〔表示〕から〔グリッド〕を選択します。〔図形作成〕ウィンドウの描画エリアに、グリッドポイントが表示されます。水平方向のグリッド1つ分の間隔は、8分音符を表し、アッチェレランドの効果をどれくらい持続させるかを指定することができます。垂直方向のグリッド1つ分は、テンポ1つ分、例えば150（拍／分）から151へ変化することを表します。
11. 〔直線〕ツールをクリックします。小さな白い円（基点）をクリックして、右上にドラッグします。〔横〕・〔縦〕ボックスを見ながら、双方の数値がそれぞれ4となる位置までドラッグしてください。
12. 〔OK〕をクリックします。

    これで、アッチェレランドがかかっている間のテンポを、グラフ（反映図形）で表記したことになります。グラフが右へ1グリッド進むごとに、アッチェレランドの効果が8分音符分長く続くようになり、グラフが上へ1グリッド進むごとに、メトロノームの速度が1上がることになります。つまり、2分音符1つ分だけつづくアッチェレランドを作りたい場合は、右方向に4グリッド分ドラッグする必要があります。さらに、最終的に速度を20（拍／分）上げたい場合は、本来であれば20グリッド分上にドラッグしなくてはなりません。しかし、ここではとりあえず4グリッド、つまり4（拍／分）だけ上にドラッグします。

13. 〔選択〕をクリックして、〔MIDI反映図形の定義〕ダイアログボックスに戻ります。
14. 〔変化の比率〕ボックスに「8：1」と入力します。例えば、全音符の長さをかけて、わずか4ポイントだけメトロノームの数値を速くしても、ほとんどその違いを聞き取ることはできないでしょう。そこで、この〔変化の比率〕によって、アッチェレランドの効き目を倍増することができます。例えば「8：1」と指定した場合、テンポは32ポイント（4グリッド×9）上がりますので、十分アッチェレランドの効果を聞き取ることができるようになります。

    同様に〔時間の比率〕で、効果が持続する時間を調整することもできます。例えば、4グリッド分（8分音符4つ＝2分音符）持続するように設定された図形を、〔時間の比率〕で「1：2」と設定して、持続時間を半分（4分音符）にしたり、「3：1」と設定して、3倍（6拍分）にすることができます。

15. 〔OK〕、〔選択〕、〔OK〕の順にクリックして楽譜上に戻ります。実際にアッチェレランドの効果を聞いてみてください。さらに速度を上げたいときには〔変化の比率〕を上げてください。効果があまりに長い範囲に渡っている場合は、〔時間の比率〕の設定比率を下げます。（ただしアッチェレランドの効果は曲に設定されている現行のテンポによっても左右されます）。

〔発想記号の選択〕ダイアログボックスの〔速度変化〕カテゴリにrit.記号が用意されています。この記号は自動的にHuman Playbackに解釈されます。「発想記号を楽譜に追加するには」をご参照ください。

Finaleでは、ラレンタンドを、プレイバック効果としても、表示用の記号としても、またはその両方を備えた記号としても入力することができます。また、rall./rit.記号はすべてのパートに一度に表示することもできますし、特定のパートにのみ表示することもできます。Finale のHuman Playback機能は“rall.”などの文字を認識して、プレイバック時にテンポ調整を実行します。詳しくは〔プレイバック設定〕ダイアログボックスをご参照ください。手動で定義したラレンタンドをプレイバックに反映させるには、〔Human Playback〕を〔使用しない〕に設定してください。

1. 発想記号ツールを選択します。
2. 記号を置きたい場所をダブルクリックします。〔発想記号の選択〕ダイアログボックスが表示されます。
3. 左のカテゴリリストから〔速度変化〕を選択します。目的の記号がリストにあれば、クリックして選択し、ステップ6に進んでください。
4. 〔作成〕をクリックします。〔発想記号の設計〕ダイアログボックスが表示されます。
5. 「rall.」または「Rallentando」と入力します。書体をイタリック体などに変更するには、文字列を反転表示して〔文字〕メニューから〔フォント〕を選択します。
6. 〔OK〕、〔選択〕、または〔配置〕をクリックして楽譜上に戻ります。

FinaleのHuman Playback機能を使用すれば、「rall.」などの文字発想記号が自動認識され、プレイバック時にテンポ調整が適用されます（プレイバック設定ダイアログボックスとを参照）。しかし、ユーザー独自のテンポ変更を手動で設定することもできます。ここでは、再利用できる発想記号に速度変化を割り当てる方法を説明します。特定の範囲に対して個々のテンポチェンジを簡単に録音するには、テンポタップを使用してください。

手動で定義したアッチェレランド記号をプレイバックに反映させるには、〔HumanPlayback〕を〔使用しない〕に設定してください。

1. 発想記号ツールを選択します。楽譜上にまだ記号を配置していない場合は、いずれかの音符をダブルクリックしてください。〔発想記号の選択〕ダイアログボックスが表示されたら、使用したい記号をクリックし、〔編集〕をクリックして、ステップ4の説明へと進んでください。
2. ハンドルをCTRL＋ダブルクリックします。〔発想記号の選択〕ダイアログボックスが表示されます。
3. 〔編集〕をクリックします。〔発想記号の設計〕ダイアログボックスが表示されます。
4. 〔プレイバック〕タブをクリックします。〔タイプ〕のリストから〔テンポ〕を選択し、〔MIDI反映図形〕を選択して〔選択〕ボタンをクリックします。〔作成〕〔図形番号〕〔作成〕の順にクリックします。〔図形作成〕ウィンドウの画面が表示されます。
5. 〔図形作成〕メニューから〔定規とグリッド〕を選択します。〔定規とグリッド〕ダイアログボックスが表示されます。
6. 〔8分音符〕をクリックし、〔グリッドポイント間隔〕に「1」と入力し、〔OK〕をクリックします。〔図形作成〕メニューの〔表示〕から〔グリッド〕を選択します。〔図形作成〕メニューの〔表示〕から〔グリッド〕を選択します。〔図形作成〕ウィンドウにグリッドが表示されます。水平方向の1グリッドは8分音符1つの音価を、垂直方向は1（拍／分）を示します。
7. 〔直線〕ツールを選択します。これから、ラレンタンド記号のプレイバック効果のグラフを作成します。〔直線〕ツールを使用して、描きこみエリア内をドラッグしていきます。下図と同じ図形を作るには、〔横〕〔縦〕テキストボックスの数値を見ながらカーソルを動かし、〔横〕テキストボックスの数値が「4」、〔縦〕テキストボックスが「-5」になった箇所でストップしてください。
8. 下図のような図形を描いてください。
   
   
   
   小さな白い円から始まり、斜めに下降していく線を描きます。この例では、横が（〔横〕テキストボックスで指定）「4」、つまり8分音符4つの長さになっているので、ラレンタンドの効果は2分音符分続くことになります。ただ、この場合の高さの「5」という値（1分間に5（拍／分）だけ、例えば120から115まで遅くなるということです）はラレンタンドに使用するには変化が小さすぎると思われるかも知れませんが、これらの値は次の段階で調整することができます。
9. 〔OK〕をクリックして〔図形作成〕ウィンドウを閉じます。
10. 〔変化の比率〕ボックスに「8：1」と入力します。1分間あたり5拍分しかテンポダウンしないラレンタンドでは、その効果を十分に聞き取れません。そこで、〔変化の比率〕の設定を変更することにより効果を増大させることが可能です。「8：1」と設定することにより、1分間に40（拍／分）のテンポダウンが実行されるようになるので、その効果は十分に聞き取ることができます。

    同様に〔時間の比率〕で、効果が持続する時間を調整することもできます。作成した図形が4グリッドの長さ（1グリッドは8分音符1つに相当するため、合計で2分音符1つ分となります）を持っているとします。〔時間の比率〕に1：2と入れると、効果が続く長さは2分の1（4分音符1つ分）になり、3：1にすると3倍になります。

11. 楽譜上に戻るまで〔OK〕、〔選択〕、〔配置〕ボタンをクリックして、ダイアログボックスを閉じます。プレイバックを聞いて、その効果の程度を確認してください。まだ十分なテンポダウンを感じないときには〔変化の比率〕の設定を上げてください。効果が特に長い範囲に渡っている場合は、〔時間の比率〕の設定比率を下げます（ラレンタンド効果の効き具合は元のテンポによっても左右されます）。

〔発想記号の選択〕ダイアログボックスの〔速度変化〕カテゴリにa tempo記号が用意されています。この記号は自動的にHuman Playbackに解釈されます。a tempo記号に手動でテンポ設定を定義したい場合は、以下の手順に従ってください。

1. 発想記号ツールを選択します。
2. 記号を割り付けたい音符または小節の付近をダブルクリックします。〔発想記号の選択〕ダイアログボックスが表示されます。
3. 左のカテゴリリストから〔速度変化〕を選択します。
4. 〔速度変化の作成〕をクリックします。〔発想記号の設計〕ダイアログボックスが表示されます。
5. テキストボックスに「a tempo」とタイプします。書体をイタリック体などに変更するには、文字列を反転表示して〔文字〕メニューから〔フォント〕を選択します。
6. 〔プレイバック〕タブをクリックします。〔タイプ〕から〔テンポ〕を選択します。
7. その隣のドロップダウンリストから拍の基準となる音価を選択します。その曲の拍子が2/4や3/4や4/4などの場合は、4分音符を選択します。2/2や3/2などの拍子であれば2分音符を選択し、3/8や6/8や9/8などの拍子の場合は8分音符または付点4分音符を選択します。
8. 〔絶対値で指定〕をクリックして、テキストボックスにプレイバックに使用したいテンポを入力します。
9. 〔OK〕、〔配置〕の順にクリックします。速度変化記号が楽譜に追加されます。

〔MIDI〕ツールを使用すれば、Human Playbackを用いてテンポ変化を演奏するのでなく、楽譜と一緒に保存されるMIDIデータを編集することができます。MIDIツールを使った設定の効果をプレイバックして確認するには、〔プレイバック設定〕ダイアログボックスで〔Human Playback〕を〔使用しない〕に設定する必要があります。

1. ウィンドウメニューから上級者用ツール・パレットを選択。MIDIツールを選択します。〔MIDIツール〕メニューが表示されます。
2. 〔MIDIツール〕から〔テンポ編集〕を選択します。
3. 編集するプレイバックデータを含む範囲を選択します。
   • 1小節を選択するには単にクリックします。
   • 複数の小節を選択するにはShift＋クリックします。
   • 画面に表示されているいくつかの小節を選択するには、ドラッグして囲みます。
   • 五線全体を選択するには、五線の左側をクリックします。
   • 〔編集〕メニューから〔すべてを選択〕を選択します。
4. 〔MIDIツール〕メニューから以下のいずれかのコマンドを選択します。
   • 〔絶対値で指定〕を選択すると〔絶対値で指定－テンポ〕ダイアログボックスが開き、選択範囲内の各音符を同じテンポで演奏するように指定できます。
   • 〔連続して値を増減〕を選択すると〔連続して値を増減－テンポ〕ダイアログボックスが開き、選択範囲のテンポを徐々に変化させることができます。
   • 〔加算〕を選択すると〔加算－テンポ〕ダイアログボックスが開き、選択範囲のすべてのテンポ値に正または負の値を加算できます。
   • 〔パーセントで変更〕を選択すると〔パーセントで変更－テンポ〕ダイアログボックスが開き、選択範囲の値を、元の量に対する指定の割合だけ変化させることができます。
   • 〔リミット〕を選択すると〔リミット－テンポ〕ダイアログボックスが開き、選択範囲のテンポの最大値と最小値を指定できます。
5. 目的の値を入力して〔OK〕をクリックします。

この機能は、スタジオ表示でのみ使用することができます。PCのキーボードやMIDIキーボードを使用して、テンポをまるで「指揮」をするようにキータップして調節する事ができます。手動で曲のテンポ調節する場合に推奨される方法です。例えば、楽譜にオーディオトラックの読み込みをおこなった場合、テンポタップを使用して、読み込んだオーディオファイルの速度変化と楽譜を同期させることができます。

テンポタップは、1、2番括弧付き反復小節線や反復記号には作用しないので注意してください。

HumanPlaybackを使用している場合には、「rit.」、「accel.」の記号は自動的に認識されて、プレイバックではテンポタップと異なる独自の情報が反映されますのでご注意ください。〔Human Playback初期設定〕ダイアログボックスの初期設定では、テンポタップによって手動入力されたテンポ情報と、HumanPlaybackでの自動認識の両方が加味されプレイバックがおこなわれるよう設定されています。

1. 〔表示〕メニューから〔スタジオ表示〕を選択します。
2. テンポタップ用の五線に対して、ステップ入力ツール（または高速ステップ入力ツール）を使って、テンポタップの際にタップする拍の音価を指定します。

   ラレンタンドのような次第にゆっくりとなるテンポを設定したい場合には、より小さい音価（4分音符ではなく8分音符）を入力することでよりきめの細かいテンポ変化を表現することができます。通常の音符の入力をするようにタップしたい音価の音符を入力します。自動的に音符が正しくはまります。音符入力に関して詳しくはステップ入力および高速ステップ入力をご参照ください。

3. リアルタイム入力ツールを選択します。
4. テンポタップ用の五線の小節をクリックし、テンポ入力を始めます。小節をクリックすると緑色のスクロールが表示され、テンポを入力の待機状態となります。最初の拍をタップすると入力が開始されます。

   したがって1、2小節分のカウントオフをおこないどのようなテンポで入力するかを想定した上で、最初の拍の入力を開始されることをお薦めします。

5. キーボードのスペースキー、またはお使いのMIDIキーボードの鍵盤を使用してタップをおこないます。タップをおこなうスピードでスクロールバーが進みます。

   テンポタップ用の五線に入力されている音符と1回のタップが対応します。

6. 完了したら、タップを停止して楽譜をクリックします。〔レコーディング終了時のテンポ〕ダイアログボックスが表示され、最後に入力されたテンポが表示されます。

   このテンポが次にテンポ変更情報がある小節まで適用されます。

7. 〔OK〕をクリックします。楽譜を再生し、テンポ変化を確認します。