複声部表記

Finaleのそれぞれの五線には4つの透明なレイヤーがあります。各レイヤーは異なるMIDIチャンネルおよびパッチでプレイバック可能で、また各レイヤーには固有のダイナミックスを設定することができます。一度に1つ、または同時にすべてのレイヤーを表示できます。各レイヤーは、〔環境設定〕ダイアログボックスで設定された色で表示されます。画面の左下部にあるレイヤー切り替えボタン／ポップアップメニューにより、現在選択されているレイヤーを確認することができます。それぞれのレイヤーにある符尾は自動的に上下に反転されるため、どちらの声部の音符かを容易に識別できます。

〔書類〕メニューから〔ファイル別オプション〕を選択し、〔レイヤー〕を選択します。〔ファイル別オプション－レイヤー〕ダイアログボックスが表示され、各レイヤーの設定ができます。
各レイヤーの符尾の方向、タイの方向、休符の位置を指定します。
一般的には、他のレイヤーに音符があるときにだけレイヤー1の符尾を上向きにして、レイヤー2の符尾を下向きにする...というように設定します。また、タイを逆向きにしたい場合もあるでしょう。つまり、他のレイヤーに音符がある場合、レイヤー1にある符尾が上向きであっても、レイヤー1のタイを上向きにしたいというような場合です。

このような場合、次のようにオプションを選択します。レイヤー1に対して、〔符尾を固定〕ポップアップメニューから〔上向き〕を選択します。〔タイと符尾を同方向に固定〕を選択し、〔他のレイヤーに音符が存在している場合のみ適用〕を選択します。レイヤー2に対して、〔符尾を固定〕ポップアップメニューから〔下向き〕を選択します。〔タイと符尾を同方向に固定〕を選択し、〔他のレイヤーに音符が存在している場合のみ適用〕を選択します。レイヤー3やレイヤー4については、曲によって任意に設定してください。

さらに、1つのレイヤーの休符の位置を指定して、別のレイヤーにある音符の「邪魔」にならないようにしたい場合があります。〔休符の表示位置〕テキストボックスに数値を入力すれば、これらの休符が表示される位置を調整できます。このテキストボックスでは、五線譜の第3線からの距離を隣り合う線上と線間の距離を1ステップとしたステップ数で表します。一般的には、レイヤー1に「6」などの正の数を入力し、レイヤー2に「-6」などの負の数を入力します。〔休符の表示位置〕オプションを使用しない場合であっても、休符は自由に垂直にドラッグできます。
〔OK〕をクリックします（またはRETURNを押します）。
〔書類〕メニューから〔編集中のレイヤーのみ表示〕を選択します。このオプションを選択しているときは、ウィンドウの左下部にあるポップアップメニューで選択されている編集中のレイヤーのみが表示されます。このとき、他のレイヤーは非表示になります。〔レイヤー〕ポップアップメニューから別のレイヤーを選択すると、そのレイヤーが表示されます。
編集するレイヤーを選択します。〔表示〕メニューから選択するか、画面左下の〔レイヤー〕ポップアップメニューで選択するか、ショートカットキー（〔表示〕メニューに表示されています）を使用することで選択できます。

ステップ入力で音符を入力する場合は、選択したレイヤーによってカーソルも異なる色で表示されます。

高速ステップ入力ツールを選択して、音符を入力する小節をクリックします。編集枠が表示されます。通常の方法で、最初のレイヤーに音符を入力します（高速ステップ入力参照）。
Shift＋下矢印キー（↓）を押します。編集枠が次のレイヤーに移動し、選択されていないレイヤーがグレー表示になります。この時点でこのレイヤーに音符を入力できます。
Shiftキーを押しながら下矢印キーを押すと、レイヤー1から昇順に移動し、上矢印キーを押すとレイヤー4から降順に移動できます。
個々の符尾を反転させるには、その符尾の上にカーソルを置き、次にLキーを押します。もう一度Lキーを押すと、反転が元に戻ります。
ぶつかっている符頭を調整したい場合は、〔スペーシング〕コマンドを使用します。詳しくはファイル別オプション－スペーシングをご参照ください。
休符をドラッグするには、その休符の上にカーソルを合わせて、ドラッグします。
休符をデフォルトの位置に戻したい場合、その休符の上にカーソルを置き、アスタリスク（*）キーを押します。
音符または休符を非表示にするには、その音符または休符の上にカーソルを置き、Oキーを押します。もう一度Oキーを押すと、音符または休符が再表示されます。
この機能を使用すると、例えば、レイヤー2にある2分休符を非表示にして3拍目から2番目の声部を表示することができます。音符と休符を隠す／音符と休符を表示プラグインもあわせてご覧ください。
0（ゼロ）キーを押して編集フレームを閉じます。
楽譜をコピーするために選択ツールを使用するときは、表示中のレイヤーのみをコピーすることもできます。例えば、レイヤー1だけをコピーするには、〔書類〕メニューから〔編集中のレイヤーのみ表示〕を選択し、次にレイヤー1を選択します。レイヤー1の音符のみが表示されるので、通常の方法でコピーをおこなうとレイヤー1の楽譜のみがコピーされます。楽譜のコピーをご参照ください。

小節の途中で別のレイヤーに入力するには

ステップ入力ツールを選択します。レイヤー1でキーボードの矢印キーを押すか、音符をOPTION＋クリックして、小節途中の先頭の拍を選択します。ステップ入力をご参照ください。
編集するレイヤーを選択します。〔表示〕メニューから選択するか、画面左下の〔レイヤー〕ポップアップメニューで選択するか、ショートカットキー（〔表示〕メニューに表示されています）を使用することで選択できます。新しく選択したレイヤーの同じ拍にステップ入力カーソルが表示されます。
選択したレイヤーで音符を入力、編集します。
不要な休符が表示される場合は、休符をOPTION＋クリックしてHキーを押すと、非表示になります。実際には、非表示にした休符は淡色で表示されます（印刷されないことを表します）。

音符／休符を別のレイヤーに移動するには

選択ツールを選択して、楽譜の範囲を選択します。範囲選択の方法については、楽譜の選択をご参照ください。なお、この操作をおこなうには小節全体を選択する必要があります。
〔編集〕メニューから〔レイヤー移動/コピー〕を選択します。〔レイヤー移動／コピー〕ダイアログボックスが表示されます。
レイヤーの内容の移動方法を指定します。例えば、レイヤー2の内容をレイヤー3に移動するには、〔レイヤー2の内容を＿へ〕を選択し、次にポップアップメニューからレイヤー3を選択します。
このダイアログボックスでの指定の際は十分注意をしてください。例えば、1つのレイヤーの内容を既に内容が入力されているレイヤーに移動するなど、既存のレイヤーを上書きすることで音符が消去される場合、警告が表示されます。
〔OK〕をクリックします（またはRETURNを押します）。

ボイス機能を使用して複声部表記をおこなうには

各レイヤーに対して、ボイス1およびボイス2（高速ステップ入力編集枠ではV1/V2と表示されます）と呼ばれる2つの独立した声部を入力することができます。

高速ステップ入力ツールを選択して、音符を入力する小節をクリックします。
記譜の順序を特に指定しないレイヤー機能とは異なり、ボイス機能では最初にまずボイス1から入力します。普通は、長い音価の音符から入力していく方が入力しやすいでしょう。
最初のボイス（ボイス1）の音符を入力します。
「最初」と言っても必ずしも上声を意味する訳ではありません。ボイス1およびボイス2は、符尾の向きを自由に設定できます。
矢印キーを使用して、ボイス2の最初の音符を入力したい位置に挿入バーを移動します。
ボイス2の音符は、すでにあるボイス1の音符の位置からのみ開始できます。またボイスの異なる音符同士を連桁でつなげることはできません。1つの小節内には複数の「開始点」を置くことができます。
ボイス2を入力するには、〔高速ステップ〕メニューの〔高速ステップ入力ガイド〕から〔ボイスの変更〕を選択します。V2という文字が表示され、ボイス2に音符を入力できるようになります。挿入バーがボイス1の音符からやや外れた位置に置かれ、ボイス2を編集中であることを表します。
ボイス2の音符を入力します。
入力直後の状態では符尾が正しい方向を向いていない場合があります。
符尾の方向を訂正するには、対象のボイスに移動します。矢印キーを押して、対象の音符にカーソルを移動します。Lキーを押すと、符尾は反対の向きに固定されます。
符尾が上または下向きに固定されていると、その音符が後で移調されても符尾の向きは変わりません。符尾の固定を解除するには、音符の上に挿入バーを置き、OPTION＋Lを押します。

休符も上下に移動できます。ボイス1またはボイス2に休符がある場合、その休符をドラッグすれば移動できます。後で休符をデフォルトの位置に戻したい場合、その休符の上にカーソルを置き、次にアスタリスク（*）キーを押します。

五線を重ねる方法で声部を追加するには

レイヤー機能とボイス機能（V1/V2）を使って声部を8つまで持つことができますが、これ以上の声部を設定する必要がある場合は、複数の五線を重ね合わせるという方法で声部を追加できます。レイヤー機能を使って複声部を表記する場合で、1つの五線に5つ以上の独立した声部が必要とされるときは、この五線を重ねる方法を使用してください。

最初の4つのレイヤーを使って1つの五線に音符を入力します。必要に応じて、ボイス機能（V1/V2）を使って各レイヤーにボイスを追加してください。
スコア・マネージャーで、作成済みの五線と同じ属性（移調、音部記号など）の新しい楽器を追加します。詳しくはスコア・マネージャーをご参照ください。
レイヤー機能とボイス機能（V1/V2）を使って、新しい五線に残りの声部を入力します。
テンポ・ツールを選択して、新しい五線のハンドルをドラッグするか矢印キーを押して、元の五線に重ね合わせます。虫めがねツールを使って拡大表示して、新しい五線が元の五線の真上にぴったり重なっているか確認してください。五線を重ねることにより、声部の数を倍にすることができます。